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ようこそばっどうるふへ

ばっどうるふココログ支部にようこそ。

「ばっどうふる」とは、本ブログの管理人である坂本和佳が作成した脚本、企画をプレゼンするブログです。まだ作品は少ないですが、随時更新していく予定ですので今後のご愛顧よろしくお願いいたします。

◇新着情報

脚本「伏線」(原作 藤子不二雄)をUP致しました。
脚本「雪女」(原作 那須雪絵)をUP致しました。
坂本真綾さんにカバーして欲しい名曲」というシリーズを始めました。
脚本「ある朝の物語」をUP致しました。

◇脚色化した作品について

本ブログには漫画、小説等を脚色した作品も含まれますが、原則として事前に担当の方々と連絡を取り、掲載について確認をいただいています。(その件についてのご質問などはこちらによろしくお願い致します)

◇現在構想中の作品

ばっどうるふでは以下の作品の脚本化を進めています

◇脚色

1、「くらしのいずみ」(原作 谷川史子)

様々な夫婦の物語をオムニバスで描く

2、「風の歌を聴け」(原作 村上春樹)

故郷で憂いのある少女と出会った青年のひと夏を描く

3、「老年期の終わり」(原作 藤子F不二雄)

廃棄される惑星で繰り広げられる老人と孫、その星へと数百年の年月を費やし、訪れた青年が繰り広げる終焉と再生のドラマ

4、「やまもと」(原作 さくらももこ「送られてきた人」)

高級品「やまもと」を送られたある初老の夫婦の一日

5、「つづれおり」(原作 メリッサ・バンク)

人生を振り返りながら、幸福への糸口を見出した30代の女性の姿。

◇オリジナル脚本

1、「東雲」

時代劇。幕末を舞台に夫を賊に殺された女性と元殺し屋が復讐を通じて心を通わせていく。

2、「青いノート」

記述することで過去を変えることができる不思議なノートを手にした青年の物語。

3、「公園の少年」

孤独なアニメーション作家がある少年との出会いを通じて再生していく物語。

4、「テレキャスター」

PV用に構想した短編。一台のエレキギターを軸に展開する父と娘の物語。

5、「急患」

総合病院を舞台に脳外科の女医が体験する不思議な出来事

6、「理想の結婚式」

架空の結婚式をプロデュースする初老のブライダル・プロデューサーの活躍を描く

7、「小説家の復讐」

独裁国家を舞台に発禁等虐げられてきた小説家が国家元首にある復讐を行う。

8、「DFE組織犯罪特捜班」

シリーズもの。日本の架空の都市を舞台に凶悪犯罪に対して結成された司法警察機関「薬物・銃器・爆発物取締局」の捜査官達の活躍を描く。


2011年8月22日 (月)

坂本真綾さんにカバーして欲しい名曲その9「ブルー・アイド・ソウル」編

坂本真綾さんにカバーして欲しい名曲シリーズ9回目です。

今回は80年代に一世を風靡した二組のアーティスト、シンプリー・レッドとロバート・パーマーから選曲しました。この二組はいわゆるブルーアイドソウルの代表格として知られていますが、イギリス人であることに加え、あらゆるジャンルの音楽を吸収する幅広い音楽性、名曲のカバーでは卓越したセンスを発揮するなど共通点も非常に多いですね。

では、さっそくこの曲から

◇Robert Palmer Every Kinda People(愛しき人々) アルバム 「Double Fun」(1978)収録

ソウルフルな歌声と共にR&Bからハードロックまでこなす柔軟で抜群の音楽センスで音楽シーンを席巻し、そのウィットとユーモアに富んだ人柄から多くの人々に愛された今は亡きロバート・パーマーの4作目のアルバム 「Double Fun」からの一曲。作詞、作曲は「All Right Now」や「Mr.big」のヒットで知られる60年代後半から70年代前半にかけて活躍した、イギリスの実力派ブルースロック・バンド「フリー」の名べーシスト、アンディ・フレイザーが手がけています。この動画はTV番組でのライブ映像ですね。素晴らしい演奏だったので今回はこちらを掲載しました。オリジナル盤はこちらです。

この曲が発表されるまでは、その高い音楽性とは対照的にそれほどセールスに結びつかず、「知る人ぞ知る」存在だったロバート・パーマーですが、この曲は全米16位というデビュー以来の最大のヒットを記録、以後の「恋におぼれて」の大ヒットやデュラン・デュランのメンバーとのユニット「パワーステーション」への参加など黄金期を迎える80年代の彼の活動への大きな足ががりとなりました。

この曲では当時の音楽シーンを席巻していたフィラデルフィア・ソウルを導入、その屋台骨として活躍していたスタジオミュージシャン集団「MFSB」に加えブルースシンガー、タージ・マハールと活動し、後にジョン・レノンの「Beatiful Boy」で脚光を浴びるスティール・パン奏者、ロバート・グリーニッジを起用するなど彼の持つ一流の音楽センスと見識の高さを発揮しています。

この曲を収めたアルバム「Double Fun」は他に彼がよく取り上げるニューオリンズのミュージシャン、アラン・トゥーサンの名曲「Night people」や、イギリスのロックバンド、キンクスの名曲「You Really Got Me」のカバーなどが収録され、聴き所の多い作品なのですが、現在、このアルバムは入手状況が困難なためか高額となっています。この曲はこちらのベスト盤などにも収められていますので、この曲単位、またはロバート・パーマーの音楽に触れたい方は是非、こちらをどうぞ。

この曲を選曲した理由は、女性ボーカルでカバーしたいと思っていたこともあるのですが、最近、若手の女性ミュージシャンが80年代に活躍した歌手の曲、例えばクレア&ザ・リーズンズがジェネシスの1983年のヒット曲「That's All」をカバーしたり、バース&ビーが「private eyes」や「Kiss on My List」などホール&オーツをカバーしているのを耳にしたことがきっかけです。70年代後半の曲なのでちょっと反則気味でもあるのですが(笑)

しかし何度も聴きなおしましたが、クラシックの有名な曲を模したフレーズといい、曲自体が本当に綺麗な曲ですね。坂本さんの歌声でこの曲をカバーするならバース&ビーのようなエレクトロニックなアレンジ、また生楽器を中心としたジャジーなアレンジ、どちらも似合うと思います。

◇simply red / thank you アルバム「Love and The Russian Winter」(1999)収録

1985年のデビュー以降、圧倒的な歌唱力とその高い音楽性から、「二人の絆」「stars」などの大ヒット曲を放ち、イギリスを中心に世界中で高い評価と記録的なヒットを記録、惜しくも2010年に活動を停止したミック・ハックネル率いるイギリスのソウルバンド「シンプリー・レッド」の1999年に発表した7作目のアルバム「Love and The Russian Winter」からの一曲。

シンプリー・レッドといえばカバーが抜群にうまいアーティストですが、この曲 「thank you」はミック・ハックネル自身によるオリジナル作品です。シンプルでいながら何度も聞き返したくなる不思議な味わいを持つこの曲は、彼自身の持つ一流の音楽性とソングライティング能力が発揮された珠玉の名曲といえるでしょうね。この曲が収録された「Love and The Russian Winter」ではこれまで彼の片腕としてプロデュース、レコーディングを担ってきた屋敷豪太(dr)、アンディ・ライト(key)に加え、鈴木賢司(G)を中心としたなど2000年以降のワールドツアー、レコーディングに参加するミュージシャンが参加していて、気心の知れたミュージシャンたちと共に創り上げたミック・ハックネルのリラックスした雰囲気が伝わる快作です。また本作以外ではこちらのベスト盤にも収録されています。

現在はロン・ウッドらとともに再結成された「フェイセズ」のボーカリストとして活動し、先ごろ来日も果たしたミック・ハックネルですが、音楽情報誌「player」に掲載されている鈴木賢司氏の連載コラム「倫敦見聞録」によると、シンプリー・レッドとの活動は停止しても、今後はミック・ハックネルのソロプロジェクトとして、これまで活動をともにしてきたメンバーらとともに音楽活動を続けていくようですのでファンの方々は要期待ですね。

この曲はその端正な雰囲気が坂本さんの歌声とよく合うと思い選曲しました。なんとなくですが、この曲に坂本さんの歌声が重なるとアニメ映画のエンディングにふさわしい感じがするんですよね。

といかががだったでしょうか。

次回は、ちょっと幅広いジャンルから親しみやすい曲を選出した「Everywhereでみんなのうた編」でいってみたいと思います。ご意見、ご感想はこちらまで

2011年7月30日 (土)

坂本真綾さんにカバーして欲しい名曲その8「音楽の匠」編

坂本真綾さんにカバーして欲しい名曲シリーズ8回目です。

今回はその優れた職人芸的気質で極上の音楽を創り上げる二組のミュージシャンの作品から選曲しました。

まずはこの曲から

◇Prefab Sprout -Sweet Gospel Music アルバム 「Let's Change the World With Music」(2009)収録

1980年代、美しいメロディとノスタルジックでモダンなサウンドから高い人気を誇り、「Steve McQueen」「ラングレー・パークからの挨拶状」など数々の名盤を送り出し、その完成度から世界中の音楽ファンを魅了、POP界最高のソングライターとして評されるパティ・マクアルーン率いるプリファブ・スプラウトの2009年発表の 「Let's Change the World With Music」からの一曲

このアルバムは当初1990年前半に発表される予定でしたが、宗教的な内容に難色を示したレコード会社との確執等により完成半ばでリリース中止と相成ります。その後、バンドの中心人物であり、実質的にはソロ活動としてプリファブ・スプラウトを展開させていたパティー・マクアルーンによって10数年ぶりに完成、リリースされることとなりました。

しかし、このアルバムをリメイクしていた際、パティー・マクアルーンは網膜はく離による視力の低下に加え、難聴を患うというミュージシャンとしては危機的な状況に陥っていましたが、そうした状況の中でも彼はこのアルバムを完成させました。この詳細についてはファンの方が主催されているサイト「Looking For PREFAB SPROUT」に詳しく記載されています。身体を蝕む逆境に立ち向かい、自分自身の愛する音楽を作り出すことに全身全霊を傾け打ち込むパティー・マクアルーンの感動的なインタビューや彼のパートナーでもあった名プロデューサー、トーマス・ドルビーの本作への思いを率直に語ったブログの記事などが掲載されており、感動的で読み応えのある内容です。是非、ご一読を。

この曲の選曲に関しては、大好きな曲だということもあるのですが、パティ・マクアルーンの歌声と坂本さんの歌声が重なったことも大きいです。パティ・マクアルーンの作る曲と坂本さんの歌声とは非常に相性がよいと思いますがいかがでしょうか?

◇Steely Dan - Time Out of Mind アルバム「Gaucho」 (1980)収録

1970年代、ビートニクとジャズに裏打ちされたその比類なき楽曲を一流スタジオ・ミュージシャンを余すことなく起用し、「」、「幻想の摩天楼」など完璧と評される数々の名盤を世に送り出したドナルド・フェイゲンとウォルター・ベッカーのユニット、スティーリー・ダンの1980年に発表した名盤「Gaucho」からの一曲。

この曲には当時の彼らがお気に入り「ダイアー・ストレイツ」のギタリスト、マーク・ノップラーが参加し、いぶし銀のギターワークを披露しています。名サックス奏者デビッド・サンボーンを中心としたホーン・セクションによるキレのある演奏、名ドラマー、リック・マロッタによるタイトなグルーヴ等、一流スタジオミュージシャンを骨の髄まで使いこなし鉄壁のサウンドを構築するスティーリーダンのスタジオワークが存分に発揮されています。

この曲は一曲目を飾る「Babylon Sisters」や「Hey nineteen」といったほかの収録曲と比較するとやや陰に隠れた存在ですが、ドナルド・フェイゲンとウォルター・ベッカーもこの曲には愛着があるようで、2004年以降のツアーではオープニングナンバーとなっています。個人的には大好きな曲で、2007年の来日公演の際はサポート・ミュージシャンたちによって、 jazzの名曲「Cubano Chants」が演奏された後、この曲のイントロで二人が登場し、ステージが始まったときはもう胸が熱くなりました。

この曲は曲自体にファンタジーな雰囲気があってそれが坂本さんに合うと思い選曲しました。私が見たスティーリーダンのライブではこんな感じでしたが、このアレンジに坂本さんの歌声が重なると非常に素晴らしい内容になるのではないかと思います。

といかががだったでしょうか。

次回は、「ブルーアイドソウル編」でいってみたいと思います。ご意見、ご感想はこちらまで

2011年7月29日 (金)

坂本真綾さんにカバーして欲しい名曲その7 「哀愁のバーバンクサウンド編」編

坂本真綾さんにカバーして欲しい名曲シリーズ7回目です。

今回は二人のアーティスト、ランディ・ニューマンヴァン・ダイク・パークスが手がけた楽曲から選曲しました。この二人といえば1960年代中盤から80年代にかけ、音楽ファンをうならせたバーバンク・サウンドの中心人物でしたね。ということで今回は、「哀愁のバーバンク・サウンド」編でいってみたいと思います。まずはこの曲から

◇Randy Newman Feels Like Home (アルバム 「Harps & Angels 」(2008)収録)

60年代はバーバンク・サウンドを牽引するライターとして、70年代は「ショート・ピープル」「セイル・アウェイ」など哀愁を帯びた歌唱と音楽性で多くの音楽ファンやアーティストの敬愛を受けるシンガー・ソングライターとして、近年では「モンスターインク」や「トイ・ストーリー」など映画音楽家として知られるランディ・ニューマンの2008年発表のアルバム 「Harps & Angels 」からの一曲。

ランディ・ニューマンは、やや渋みのかかったエスプリの聴いた楽曲から、ニルソンをはじめ多くのアーティストにカバーされるミュージシャンズ・ミュージシャン(ミュージシャンが好んで聴くミュージシャン)として知られていますが、歌詞は皮肉に満ちたブラックユーモアが満載で時折その毒舌ぶりから、何かと物議を醸すことでも有名です。(その歌詞についてはこちらのサイトが詳しいです)

ただ、「トイ・ストーリー3」の予告でも使用された「losing you」や「名探偵モンク」の最終回で流れた「when I gone」を聴いているとランディ・ニューマンは根は純粋で人の心を理解できる繊細な人で、それゆえあの毒舌になるのではないかとふと感じてしまいます。

「Feels like Home」もそうしたランディ・ニューマンの繊細さが発揮された作品です。彼のピアノを中心にストリングスやウッドベースドラムスが重なるアコースティックな編成に哀愁たっぷりの歌唱が重なるアレンジは包み込むような優しさに満ちていて、ランディ・ニューマンの持つ優しさと音楽に対する純粋さが垣間見れる珠玉の一曲となっています。

この曲は、坂本さんのあの優しい歌声で歌って欲しいと思い選曲しました。この曲はボニー・レイットリンダ・ロンシュタットによってカバーされているのですが、もし、坂本さんがカバーするならこのバージョンのように生楽器を主体としたアレンジで歌って欲しいですね。

そういえば、「名探偵モンク」の特集を見ていたら、主題歌を声が似てるから角野卓三さんが歌っていると思いこんだ視聴者のコメントが紹介されていましたが、その瞬間思わず「角野卓三じゃねーよ!!ランディ・ニューマンだよ!!」(近藤春菜)と突っ込んでしまいました(笑)

◇Inara George  Accidental(アルバム「Invitation」(2008)収録)

レッド・ホット・チリ・ペッパーズなどの仕事でも知られる売れっ子プロデューサー兼キーボード奏者、グレッグ・カースティンとのユニット「birds&bee」のヴォーカル兼ソングライターとして注目を浴びている新世代気鋭のアーティスト、イナラ・ジョージの2作目のソロアルバム「Invitation」からの一曲。

イナラ・ジョージさんは日本でも人気の高いロックバンド「リトル・フィート」のヴォーカリスト、ソングライター、名ギタリストであったローウェル・ジョージの娘さんです。本国、アメリカでは「birds&bee」のボーカリストしてブレイクしました。日本ではこの曲「Again&Again」がキューピーのCMに使われていたので聞き覚えのある方もいらっしゃると思います。

「birds&bee」やソロ第一作「All Rise」ではエレクトロニックな音楽を展開していましたが、この曲が収録されているアルバム「Invitation」ではアコーステックギターなど生楽器を中心としたナチュラルなサウンドを展開しています。この曲「Accidental」ではバーバンク・サウンドの立役者であり、シンガーソングライター、アレンジャーとして多彩な活動を行い、父親とも交流のあったのヴァンダイク・パークスが編曲を担当しています。どこかシュールな味わいのストリングスと愛らしく魅惑的な彼女のボーカルが絡み合う摩訶不思議な味わいの一曲ですね。

そのイナラ・ジョージさんですがノスタルジックなポップを展開するクレア&ザ・リーズンズへの参加や、自身のギターとボーカル二人を携えたリヴィング・シスターズを結成し、古きよきアメリカのルーツミュージックを展開する等その幅広い音楽活動から目が離せない存在となっています。

この曲は愛聴しているNHKFMの「世界の快適音楽セレクション」で流れた際に、「(声質が)坂本さんに似てる」と思いました。時々、頭の中でこの曲の音に合わせて坂本さんの歌声で再生してみるのですが、違和感なくはまりました。個人的な意見で恐縮ですが、ヴァン・ダイク・パークスと坂本さんの組み合わせは非常に相性がいいと思います。坂本さんの楽曲をヴァン・ダイク・パークスがアレンジする。是非、実現して欲しいですね。

といかががだったでしょうか。

次回は、「音楽の匠編」でいってみたいと思います。ご意見、ご感想はこちらまで

 


2011年7月10日 (日)

坂本真綾さんにカバーして欲しい名曲その6「遅咲きと夭折のシンガーソングライター」編

このコーナーを立ち上げるにあたって、坂本さんの楽曲を何曲か鑑賞したのですが、さすがにキャリア15年ということもあり、様々なタイプの音楽を手がけられていますね。その中でも特に心を引かれたのはこちらの曲です。この曲の雰囲気と共通する曲を2曲セレクトしました。

まずはこの曲から

◇Ron Sexsmith 「Speaking With The Angel」(1995年 アルバム「Ron Sexsmith」収録)

音楽評論家の渡辺亨氏曰く「歌の織物職人」と評され、荒削りながらも純朴で高い音楽性から世界中の音楽ファンに感動を与え続けるカナダ人シンガーソングライター、ロン・セクスミスのデビューアルバム「Ron Sexsmith」からの一曲。

この曲が収録されたファーストアルバムが世に出たのは彼が32歳のときです。それまでは郵便局で働きながら、音楽活動を続けていましたが、このアルバムの評判が口コミで広まり、それを耳にしたエルビス・コステロやポール・マッカートニーが絶賛、その勢いから好セールスを記録し、一躍世界的なアーティストへと駆け上がりました。コステロ曰く「この先20年は聴き続けられる」と絶賛した本作は、ノスタルジックで美しい楽曲が全編を彩り、ロンのソングライティング能力の高さと音楽性をあますことなく体感できる作品です。収録曲の一つ「シークレット・ハート」は後にニック・ロウがカバーして話題となりました。

この曲 「Speaking With The Angel」は彼が第一子を授かった際に作り上げた曲です。子供を持った父親の心情を淡々としながら美しく感動的に綴った歌詞とメロディが感動的ですね。

この企画を考えたとき、真っ先に思いついたのはこの曲です。それだけ好きな曲でもあり、坂本さんの歌声がマッチする曲だと考えてます。何度も坂本さんの声で脳内再生しているのですが、そのたびに涙腺が緩んでくるんですよね。

この曲はイギリスの作家、 ニック・ホーンビーが自身の自閉症の息子の通う学校への寄付を募るため作った短編集(邦題「天使だけが聞いている物語」)の表題となっています。この短編には最近、アカデミー賞を受賞した俳優、コリン・ファースが書いた短編も収録されていますので、映画好きの方は是非チェックを。

遅咲きのシンデレラボーイとなったロン・セクスミスですが、この後もセカンド、サードと充実した作品を発表、最近、新しいアルバムを発表しました。こちらで楽曲が聴けますが、円熟の域に達していますね。こちらでは3年前のインタビューが見れますが、内容からもロン自身の誠実な人柄がよく伝わってきます。ロン・セクスミスの生き方や姿勢を見ていると良い作品を作るということに年齢は関係ないとつくづく感じます。何かものを作って表現するという広い範囲で捉えても、ロン・セクスミスから学ぶべきものは多いですね。

◇nick drake 「Pink moon」 (1972年 アルバム 「Pink moon」収録)

二曲目は1960年代後半から70年代初めに活躍したイギリスのシンガー・ソングライター、ニック・ドレイクの3枚目のアルバム「Pink moon」の一曲目に収録されている曲から。

前述のロン・セクスミスは32歳でデビューしましたが、ニック・ドレイクは26歳の若さで薬物の過剰摂取によって他界しました。この曲はその彼の実質的なラストアルバムとなった作品です。(このアルバムの発表から2年後死去)

存命時は彼が所属していたレーベルの重役、クリス・ブラックウェルや当時、音楽界を席巻し、彼の作品を手がけていた名プロデューサー、ジョー・ボイドなど彼の才能を高く評価する人は少なくなかったのですが、発表するアルバムのセールスの伸び悩みに加え、繊細すぎる気質から鬱病に陥っていました。

このアルバムはの興行的な不振により、精神的に追い詰められ鬱状態にあった中で録音された作品です。常連スタッフのジョン・ウッドのサポートを受け、自身の歌とギター、ピアノのみでのべ二日という短期間に製作されましたが、完成度は高く、2000年代には音楽雑誌「メロディ・メーカー」、「ローリング・ストーン」がベストアルバムに選出されるなど普遍的な価値をそなえた作品です。

特にこの曲「ピンク・ムーン」はその白眉ともいえる曲で、わずか2分間の短い曲ですが、芳醇で美しい世界が展開され、ちょうど曇り空の隙間からさした光のようにはかなく美しい情感を持っています。中盤のピアノソロは言葉にいいあわらせないほど一瞬の輝きを放っていますね。

これも坂本さんの囁くような歌声に似合う曲だと思いセレクトしました。坂本さんのささやくような歌声がニック・ドレイクの描く世界観によくマッチするのではないかと思っています。

このアルバムの発表以後は鬱のためプロミュージシャンとしての活動を停止していたニック・ドレイクですが、晩年は徐々にですが音楽製作ができるほど回復していたようです。しかし、その後、薬物の過剰摂取により他界してしまいます。彼の人生と人となりについては、こちらの本「ニック・ドレイク 悲しみのバイオグラフティ」に詳しく記載されています。非常に読み応えのある本なので興味をもたれた方は是非。また本作以外でもニック・ドレイクが残した他のアルバム、ストリングスを導入した処女作「ファイブ・リーブス・レフト」、ギター、ベース、ドラムなどのバンド編成で製作された前述の「ブライター・レイター」ともに味わい深い傑作ですので、この機会に是非ご鑑賞ください。

といかがだったでしょうか。

今回はちょっとしんみりするような曲が多かったように思えます。次回はそのしんみりにちょっと変化球を加えた選曲で、「哀愁のバーバンク・サウンド」編でいってみたいと思います。

いつものようにご意見、ご感想はこちらまで。

2011年6月19日 (日)

坂本真綾さんにカバーして欲しい名曲その5 「ついでにストーンズ」編

坂本真綾さんにカバーして欲しい名曲シリーズ5回目です。

前回はビートルズだったので、今回はストーンズでいってみたいと思います。

今でこそ並ぶものなき世界最高のロックバンドとしての地位を確立したストーンズですが、ちょょうどデビューしてしばらくの間、1960年代の中ごろまでは「ビートルズのライバル」として何かと比較されることが多いバンドでした。

その当時は、おそろいのスーツをきて親しみやすい楽曲の演奏するビートルズとは対照的にストーンズはブルースやR&Bの影響を受けた生々しい楽曲と着崩した衣装を特色としていましたから、ビートルズとストーンズは 「健全と不良」「軟派と硬派」という感じで色分けされ、当時の音楽ファンもどちらを支持するかで二分されるという感じでした。余談ですが、かの大ヒットドラマ「ビバリーヒルズ青春白書」でも60年代に青春をすごしたナットさんがストーンズの最新アルバムに店の名前を改名しようという提案に、「私はビートルズのファンだから」といってあしらうシーンがありましたので、それぞれのファンもちょっとライバル関係だった雰囲気があったようですね。

もっともこれはストーンズの当時のマネージャーが考えたイメージ戦略で、実際はストーンズもビートルズも売り上げに影響しないようにレコードの発売時期をずらしたり、お互いのレコーディングに参加したりと実際は仲良しでした。

余談ですが、不良といっても結成当時はミック・ジャガーはイギリス名門大学の学生でしたし、リズム隊のチャーリー・ワッツとビル・ワイマンは社会人のセミプロ、ブライアン・ジョーンズはオタク、唯一それっぽいことをしていたキースもバイクを乗り回し、ギターを弾いているだけという感じでしたから、ドイツのストリップクラブで日夜、薬物を決めながら演奏していたビートルズのほうがばりばりの不良だったんですけどね。その時代のビートルズについては「バックビート」という映画に詳しく描写されています。この映画、音楽ものとしても青春物としても非常に素晴らしい出来なので是非おすすめです。

と前置きが長くなってしまいましたが、まずはこの曲でいってみたいと思います。

◇友を待つ(1981年 アルバム「Tatoo You」収録)

1981年に発表されたストーンズのアルバム「刺青の男」の最後を飾る曲です。このアルバムからストーンズは 1970年代の荒々しいイメージから脱却し、現在のような健康的でエンターテイメント志向にあふれたバンドとしてイメージを転換していくこととなります。

この曲はそれを象徴するかのように美しく軽快な仕上がりとなっていますね。この曲のサックスソロをジャズ界の大御所、ソニー・ロリンズが担当したことでも話題になりました。この曲はボサノバ風にアレンジして、是非女性ボーカルで聞きたいと思っていましたので、今回の特集に選曲してみました。


◇Happy (1972年 アルバム「Exile on Main St」収録)

2曲目は1972年に発表されたストーンズの最高傑作と評される大作「メインストリートのならず者」からの一曲。映像は1972年のライブ映像です。前述の1980年代のストーンズは対照的に荒っぽくどこか不健全だけども 言葉に言い表せないようなエネルギーに満ちいていますね。

この曲はギタリストのキース・リチャーズの作品です。余談ですが前述の「友を待つ」はミックがキースとのことを念頭において作ったそうで、ミックはいつも待たされる側だったとか(笑)。この曲も縛りを嫌い、直感と雰囲気を重視するキースの感性が発揮されたパワフルな一曲となっています。

この曲を選曲した理由としては、今回の選曲ではどちらかというと情感を重視する静かな雰囲気の曲が多いように感じたので、是非、パワフルな曲が必要ではないかと思ったからです。坂本さんもライブでは割とロックぽい感じの曲をされているので、この曲などはあの赤いテレキャスター片手にガンガン演奏してほしいですね。

といかががだったでしょうか。

ビートルズ編は意外と選曲がうまくいったんのですが、今回のストーンズ編は「友を待つ」以外は全く思いつかないという状況でした。それだけストーンズの音楽性が唯一無比ということなんでしょうね。他に候補としては「全てが音楽」「ハング・ファイヤー」ウィンター」などを選曲してみました。

次回は、「遅咲きと夭折のシンガーソングライター編」でいってみたいと思います。ご意見、ご感想はこちらまで


2011年4月12日 (火)

坂本真綾さんにカバーして欲しい名曲その4 とりあえずビートルズ略して「とりビー」編

「坂本真綾さんにカバーして欲しい名曲」シリーズの4回目です。

今回から洋楽編いってみたいと思います。4回目は「とりあえずビートルズ」略して「とりビー」編です。

最近は一連の震災に関する話題でナーバスになることも多く、心が不安になったときには音楽を聴いていたのですが、やはり心が落ち着いた曲はビートルズの曲でした。そのビートルズの曲を聴くうちに、「この曲って坂本さんの歌声に合うなあ」と思った曲が何曲か出てきたので、今回の「とりビー」編を作ってみました。

そういえば、4月8日からBSプレミアムで始まる坂本さんが声の出演をされている「glee」でもビートルズ関連の曲が取り上げられていますね。

まずはこちらの曲から

◇Getting Better- The Beatles (1967年 アルバム「Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band」収録)

ご存知歴史的名盤「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」の4曲目に収録されている曲です。

この曲は愛聴しているNHKFMのラジオ番組「世界の快適音楽セレクション」で知った曲で、様々なトーンのボーカルの掛け合いから選曲しました。ちょっとキャッチーな曲調に坂本さんの様々な歌声が折り重なり、掛け合っていくのってすごく素敵だと思うのですがいかがでしょうかね?

◇Good Night- The Beatles (1968年 アルバム「The Beatles」収録)

通称、「ホワイトアルバム」として知られるビートルズ10作目のアルバム「The Beatles」の最後を飾る曲。この曲も前述の「世界の快適音楽セレクション」で知った曲です。

この曲を選曲した理由はやはり曲の美しさ。この一言です。この美しい曲をあの坂本さんの歌声で聴きたいと思い選びました。この曲のボーカルはリンゴ・スターが努めてます。私が「世界の快適音楽セレクション」で耳にしたのは細野晴臣さんのカバーバージョンでした。リンゴや細野さんのように低音の効いた男性ボーカルもいいのですが、坂本さんのような優しく美しい女性ボーカルでカバーするとこの曲の美しさがいっそう映えるのではないかち思います。

と「とりビー」編。いかがだったでしょうか。

坂本真綾さん+ビートルズで選曲していったのですが、「two of us」もいいし、「Across The Universe」もいいといった感じでどんどん曲目が増えていってあっという間に10曲近く選んでしまいました。なんか手前味噌で恐縮なのですが、坂本さんによるビートルズのカバーアルバムって、音楽的にもまたセールス的にも非常に有益な企画だと思うのですが、いかがでしょうか?レコード会社のみなさん。

いつものようにご意見、ご感想はこちらまで。

2011年3月 6日 (日)

「ある朝の物語」作品解説

◇「ある朝の物語」について

この作品は2005年頃、yukiさんの「Home Sweet Home」のプロモーションヴィデオ(以下PV)用に製作した脚本です。今回、HP作成にあたり、「ある朝の物語」と表題をつけ、採録致しました。PVといっても私がこの曲を聴いたときは、すでにこの曲のPVが作られていましたので、自分ならどのようなPVを作るかというのを考えて作った個人的な作品です。PV用に書いたシナリオですので、台詞を極力拝し、登場人物の動作や映像のつながり、小道具等でストーリーや登場人物の心情や語るようシーンを構成していきました。採録の際に感じたのですが、無声映画のように台詞を使わないことを前提に脚本を書いていく作業は非常に楽しく、また、脚本を書く上でもいろいろと勉強になることも多かったです。

◇ストーリーについて

ストーリーなのですが、これは「Home sweet home」を聴いているうちに頭の中に浮かび上がってきた映像をストーリーに纏め上げ、脚本にしました。普段、私は音楽を鑑賞しながら、頭の中で映画のワンシーンや映像を作る癖があります。そうした映像はほとんどが断片的なのですが、「Home sweet home」に関しては起承転結も含め、この作品のストーリーを含んだ映像がくっきりと頭の中に浮かび上がってきた覚えがあります。改めて読み返してみたのですが、アメリカの古典SF作家(例えばブラッドベリ)の作品に似たようなストーリーまたは設定の作品があったように思えます。もし、ご存知の方がいらっしゃいましたらこちらまでご連絡を。

◇作品のモチーフ
 
作品を構成していく上で、モチーフになったのは荒木経惟氏の写真集「陽子」です。私はどちらかというと荒木さんの作品は苦手な部類に入るのですが、この作品だけは特別で、はじめてこの作品に触れた際は、鑑賞し終えた後に心の中に深い感動が広がっていった覚えがあります。特に死期が迫った陽子さんの姿を綴った写真郡は胸に迫るものがあり、そのときの感動をイメージにまとめ、ストーリーやシーンの一部の中に取り入れてみました。

◇作品解説
あらすじ一部本編の結末に触れます
脚本1Pに進む

ある朝の物語 あらすじ (ネタバレ有り)

近未来の話。一人の科学者がいた。科学者には妻が居た。彼女は科学者と学生時代からの付き合いで、大学を卒業してすぐに結婚した。二人は仲睦まじく暮らし、その生活は朝の光のように優しく穏やかで輝きに満ちたものだった。

しかし、幸せは長くは続かなかった。結婚して5年後、妻は病魔に犯された。彼女の病は癌のように致死率の高く、決定的な治療法はまだ発見されていなかった。科学者は妻に献身的に看病し、医師の手を借りてできる限りの対処を尽くし、妻の回復に一途の希望を託した。しかし、病魔は確実に彼女の体を蝕ばみ、その体は痛々しく窶れ果てていった。

絶望的な状況の中で、科学者にとって唯一の救いとなったのは妻だった。病に冒され死期が迫りつつあっても、妻は男の前では気丈に振る舞い続け、献身的な介護を続ける科学者に感謝を欠かさなかった。彼女は結婚していた時と同じように穏やかで安らかな微笑を浮かべていた。自身が死を迎える最後の瞬間まで。

妻が死んだのはある晴れた日の朝だった。息絶えた彼女の部屋の窓からは優しく暖かい朝の光が差し込んでいた。窓の外では街路の緑が青々と光り、子どもたちの声も聞こえていた。妻を失った科学者を除いて、大勢の人間にとってその朝は平凡ながらも、心地よさと若干の希望を感じるいつもの朝であった。

数年後、残された科学者は妻を失った悲しみから逃れるため、ある任務を請け負った。それは宇宙に係る任務で、地球の近くに存在するある惑星の中継基地に赴任し、情報収集と分析を行い、その結果を地球に報告するというのが主な内容だった。任務の内容上、惑星で何年間もたった一人で生活する事を強いられるが、最愛の人間を失った科学者にとってそれは好都合だった。

惑星に派遣されてからしばらくして、科学者はそこで一台のアンドロイドを製作した。それは高性能の学習機能と記憶装置をそなえた妻そっくりの姿をしたアンドロイドであった。彼は人間の行動をインプットし、自分の言動に反応できるよう設定した。当初は機械的な受け答えしたできなかったが、徐々にアンドロイドは科学者に対して人間らしい暖かい受け答えができるようになった。
 
それができるようになると科学者はアンドロイドに自分の妻の情報をインプットした。アンドロイドの能力には限界があり、妻のようなキャラクターになることはできなかったものの、科学者と妻の持ついくつかの記憶、例えば、旅行の思い出等を共有する事ができるようになった。

アンドロイドは科学者が思う以上の性能を持ち、その立ち振る舞いは一見すると普通の人間と見分けがつかなったが、人間の感情については理解が及ばない範囲があった。喜怒哀楽ならば「喜び」と「楽しみ」を理解する事ができたが、「怒り」と「哀しみ」を理解する事はできなかった。特に「哀しみ」はアンドロイドにとっては理解の及ばない部分で、科学者が泣いているとそれは身体の異常から来る苦痛によるものだという判断しかできなかった。しかし、科学者にとっては自身の喜びと楽しみを共有してくれるアンドロイドの存在は何よりの癒しであり、それで十分だった(怒りについては科学者自身が温厚で穏やかな人だったのでそれがなくても十分だった)。

アンドロイドの存在はやがて当局に知られる事となったが、任務の内容上、その必要性は十分あったし、むしろ、作業効率が前よりも増した事、加えて容姿に関しても科学者の過去を知る人間はほとんどいなかったのでさほど問題にはならなかった。科学者は誰からも干渉される事なく、アンドロイドとともに穏やかな日々を過ごした。やがて、科学者はどんどん年を重ね、死んだ妻の倍ちかい年齢になった。白髪が頭を覆うようになった彼とアンドロイドとは、夫婦というよりもどちらかというと仲のよい娘と父親といった印象であった。

しかしその頃になると科学者の住む惑星の基地の無人化が決定された。科学者が担った任務はすでにアンドロイド一人でも十分まかなえたし、高齢になった職員をそのまま置くことにリスクも多かった。科学者には退去の辞令が降り、その準備に追われた。一通り準備が終ると科学者はひたすら迎えを待った。しかし、迎えは中々こなかった。そのうち、科学者はこの場所に一生住み続ける事を考え始めた。アンドロイドを地球に持ち帰る事はできないし、このままこの惑星で暮らしていれば、以前のように愛する人間に先立たれる悲しみを経験する事もないのだ。そう思い始めてから、科学者の心も安らかになり、また、いつもの穏やかな生活を送りはじめた。

しかし、迎えは突然やってきた。科学者はアンドロイドに別れを告げ、荷物をまとめその惑星を後にした。

科学者の去った基地にはアンドロイドだけが残された。アンドロイドはこの先、科学者がいたときと同じようにまたいつもと同じ生活を繰り広げるだろう。何十年もまたは何百年も。自身の機能が停止するまで。

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ある朝の物語(1-3)

1、屋内-台所(朝)

  沸騰するやかん。
  女性の手がコンロの火をとめ、やかんの取手をつかむ。
  お湯がカップに注がれ、コーヒーが溜まっていく。
  穏やかな表情でカップにお湯を注ぐ女①。
  二十代中盤の穏やかな印象の美人である。
 手には金色の指輪が光っている

2、屋内-食卓(朝)

  食卓で男①が一人新聞を読んでいる。
  男①は40すぎの細身で白髪の中年男性。
  指には先ほどの女①と同じ指輪が光っている

3、屋内-家の外(朝)

  二人の住んでいる家の外。
  地面に大きな影が覆う。

4、屋内-台所(朝)

  二人分の朝食(パンケーキ、サラダ、コーヒー)が並んでいる。
  女①はそれを盆に載せ、ゆっくりと食卓へ歩き始める。

5、屋外-家の外

  怪しげな影の中から、不気味な人影が降り立つ

6、屋内-食卓(朝)

  男①の元に女が朝食を運んでくる。
  男①はそれに気づくと新聞をたたむ。
  女①のほうを見て微笑む男①。
  女①も男①の顔を見てニッコリと笑う。
  二人は向かい合い席につくと、朝食を手に取る。
  突然、玄関のブザーが鳴る。
  男①はドキッとした表情を浮かべ、席から立ち上がる。
  その姿をきょとんとした表情で見つめる女①。

7、屋内-玄関(朝)
  
  男①がドアをあける。
  そこには宇宙服を着た男が立っている。
  男①はそのまま玄関に立ち尽くす。
  男①を心配そうに見つめる女①。

8、宇宙
  
  広大な宇宙。
  その中にぽつんと小さな惑星がある。
  そこに小規模な施設が建っている。
  その施設の窓から先ほどの二人の姿が見える。
  二人の住む家は、小さな惑星に設置された中継基地だった。

ある朝の物語(2-3)

9、屋内-部屋の一角

  薄暗い。
  地球と交信するための機材が置かれている。
  その奥の部屋から明かりが漏れている。

10、屋内-男①の部屋

  男①がベッドに腰掛かけ、頭をたらしている。
  しばらくして男は立ち上がり、部屋の隅の机の引出しをあける。
  そこには数枚の写真がある。
  男①はその写真を手に取ると、一枚ずつめくり始める。

一枚目 日差しの下、並木道を背に男①と女①が笑顔で写っている
     女①は今と同じ年齢だが、男①は今よりも若く二十代中盤。

二枚目 結婚式の写真。式の合間に撮影されたスナップ写真。
     モーニング姿の男①とウエディングドレスの女①の写真。

三枚目 男①が撮影した女①スナップ写真。
     おどけた女①の姿が写っている
 
四枚目 病室にいる女①の姿。
     笑顔を浮かべているがひどくやつれている
  
五枚目 臨終の女①の姿。
     やすらかな死に顔を浮かべている

六枚目 女①が死んだ日に撮影した青空の写真

  男①6枚目の写真をめくり終える。
  その時、男①はドアの傍に立つ女①に気づく。
  女①は男①のそばまで寄ると隣に腰掛ける。
  男①は女①の瞳を見つめる。
  その瞳の奥には精密な集積回路が動いている。
  女①は男①が亡き妻に似せて作った精巧なアンドロイドである。
  男①は瞳を通して異常が無いことを確認する。
  男①は悲しげな微笑を浮かべる。
  アンドロイドは男の表情に呼応して、無邪気な微笑を浮かべる。

11、屋外-惑星
  
  広大な宇宙。
  その中の小さな惑星の上にぽつんと立つ小さな基地。
  基地の近くには宇宙船がある

12、屋内-玄関

  アンドロイドが荷物を運んでくる。
  男①は自分の着込んだ宇宙服をチェックしている。
  アンドロイドは男①のそばに荷物を置く。
  男①はアンドロイドの顔を見る。
  二人は見詰め合う。
  アンドロイドは男①の目に涙が溜まっているのを見つける

アンドロイド「どこか痛むの?」
男①「いや、だいじょうぶだ」

  男①はアンドロイド額にキスをし彼女を抱擁する。
  それが終わると自分の指輪をはずし、彼女の指にはめる。
  男①はヘルメットをかぶり、荷物を持つと立ち上がる。
  玄関を出て行く男①。
  その後姿を見つめるアンドロイド

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